Vol.1 Cry Baby 系
最初のご紹介:JEN Cry Baby Super #250.422
最初にして最少の使用回数。訳ありでお蔵入りに…
買うのだったら VOX の Wah-Wah と決めており、都内の楽器店を随分と探したのですが、新品はおろか中古品にも巡り合うことができず、やむを得ず新品を 2割引で購入したことを、覚えています。それでも嬉しかったなぁ。
性能には何の不満も感じませんでした。若かったので、拘りはルックスにあったのです。
皮肉なもので、これを入手した翌月には下に紹介する VOX の Wah-Wah を入手できてしまったもので、あっさり予備機に格下げ辞令。悲しや “箱入り赤子(Baby)” となってしまいました。さすがに箱は傷みが始まっていますが、本体やバッグはほぼ新品の状態で今日に至っています。もちろん、付属の説明書等も残っています。
2番目のご紹介:VOX #250.049
2番目にして出会った、真打・決定版! バンドの大学生からは、高3にして VOX は生意気と言われました(笑)。
先述のとおり、JEN Cry Baby Super を購入した直後に入手できてしまった、夢にまで見た VOX の Wah-Wah 。
VOX のロゴやクロームメッキされたペダルが何とも格好よくて、何回見ても飽きず、もうご満悦の毎日でした。
比べてみると、先に購入した JEN Cry Baby と筐体の内部や構造、回路の定数などはほぼ同じ(トランジスタの型番は違いましたが)で、同じ工場で外観の仕様だけ変えられて作られた製品であること※)がわかりました。品番も 250 から始まっていますしね。
※)この頃は、VOX Wah-Wah に JEN製と Thomas製があることを知らなかった。
ただ何もかも同じというわけではなく、特にペダルの可動範囲ははっきり違いました。
JEN Cry Baby よりも可動範囲が狭く、急激でハイなワウ効果が私を虜にしたのです。
永きに渡って私とともに歩んだ “名機” でしたが、壊れる前に引退させたいとの思いから、Jim Dunlop製の GCB-95 に後を任せて隠居させました。
購入した時の逸話があって、これを買った高円寺の中古楽器店に赴いたとき、実は恋い焦がれた VOX Wah-Wah があり得ることか、何と2台も店頭にあったのです。しかしそのうちの 1台は故障していて音が出ない状態でした。店員さんから「2台買ってくれるのなら、壊れている方は 5,000円にしておくよ」と言われ、もの凄くど真剣に悩みました。
今みたいな、カード決済がどこでもできてしまう環境なら、即買いしたことでしょう。
でも貧乏学生の悲しさで 5,000円の余分などなく、泣く泣く諦めたことは今でも悔しいし、そのときには直せませんでしたが、数年後には Cry Baby のリペアはできるようになっていたので、無理してでも買っておいたらなぁと、まるで昨日のことのように諦めきれず、今でも未練がましく後を引いているのです。まったく困った大人になりました。
3番目のご紹介:Jim Dunlop GCB-95 Original Cry Baby
ここからは、購入順不同にご紹介します。
もはや世界の定番中の定番で、説明不要のベストセラー機種であることは、言うまでもありません。
当りはずれのない安定した品質はもちろん、Wah-Wahとしての性能も申し分ありません。あまりにも普及したがために、却って標準機として他の Wah-Wah との比較対象のやり玉に上がったりしていますが、そんなことを考える前に、こいつを 100% 使いこなすことの方が先決だと思いませんか? → Canare GS-6 でも同じことが言えます!
他の Cry Baby との決定的な違いは、Input と Wahの回路との間にバッファー回路が挿入されていることです。このバッファー回路の働きで、Wah回路に送られる信号は安定し、GCB-95 の性能が最大限に発揮できるようになっているのです。
最近のギターは多様化し、昔ながらのハイインピーダンスなパッシブPU から、EMG に代表されるローインピーダンスPU を装備したもの、パッシブPU にアクティブ・プリアンプを組み合わせたもの(Eric Clapton Stratcaster 等)など、仕様を特定するのが難しいほどの機種が満ち溢れています。古典的な Cry Baby は、このような多種多様なギターへの対応を念頭に設計されていないため、相性というか適応範囲が極めて狭くなっています。
GCB-95 の偉大なところは、バッファー回路の挿入によって多様化したギター出力の差に順応することができるため、特に相性に留意しなくても、気軽にギターを接続することができるように設計されていることなのです。そしてギターの次に GCB-95 を接続しておけば、Wah-Wah をバイパス にした時にもバッファー回路は効いた状態にあるので、以降の信号はローインピーダンス化されたままとなり、ノイズの影響を受けにくくなるというご利益も生まれるのです。正に Wah-Wah 機能リサーチの結晶と言えるでしょう。
Wah-Wah のモデファイでよく GCB-95 のトゥルーバイパス化が謳われているのですが、それをするくらいなら、別に VOX V847 のような古典的 Cry Baby タイプをトゥルーバイパス化させて使い分ける方が用途に適っていると思うのですが、いかがでしょうか?
4番目のご紹介:VOX V847
Cry Baby という名称が、Jim Dunlop社の登録商標化されてしまったことで、全く同じ源流を持っていてもCry Baby と称せないそうです。遡れば Cry Baby がイタリアの JEN社と米国の Thomas Organ社製に分かれて作られた70年代にも同様の混乱が見られました。
昔の専門誌では、Cry Baby は Wah-Wah の一種ですなどと、商標と機能を混同した記事もあったっけ…
冒頭から脱線しましたが、名器 VOX V846 や JEN Cry Baby Super の正当な継承者(あくまでも回路面です。誤解の無いように)と言えるのが、この VOX V847 でしょう。
回路も部品点数もほぼ同じで、この Wah-Wah こそトゥルーバイパス化やインダクターの交換などを楽しむベースに打ってつけです。またこれらのカスタマイズ工作が苦手な方にも、ハンドワイヤリングバージョンなどの高級機種が用意されていることも魅力です。
パッシブPU 搭載のギターには迷わずお勧めする、正に現代の銘器と言えるでしょう。
5番目のご紹介:JEN Double Sound Super #250.396
いわゆる Wah-Fuzz と呼ばれる “複合機” です。
「一粒で二度美味しい」と褒めちぎりたいところではありますが、どうも「二兎を追う者は一兎をも得ず」の方が合っているように感じるのが惜しまれます。
それでも偉いのは、サイドのトグルスイッチで普通のCry Baby としても使えるようにしてあることかな?
Fuzz との抱き合わせに強制感が無いのが好きです。
機能について説明しておくと、
トグルスイッチを先端側:Wah-Wah とアンプダイレクト(バイパス)の切り替え
トグルスイッチを手前側:Wah+Fuzz と Fuzz のみ の切り替え(バイパスなし)
となります。Wah は別に Fuzz にパラメータが無く、かかりが固定なのが残念ですね。
モデファイのネタとすれば、①トグルスイッチをセンターにすると Fuzz とアンプダイレクトになる。②ロータリースイッチ化する。③ Fuzz にパラメータを増設する。
とかいろいろ思い付きます。やりませんけれどね(笑)。
6番目のご紹介:VOX V847SP 限定品
V847 の古色仕上版というのか、でも V847 を一生使い続けたって、こんな風にはなりませんけれどね。
黎明期の VOX Wah-Wah をイメージしたものでしょうか?違和感を感じてしまうのは、やはりフレームの方が梨地になっていないからだと思います。
PCB も含め、性能は量産品の V847 と全く同一です。