Vol.1 カールコード編

カールコードという呼称は、日本独自(Japanese English)なのでしょうね。

コイルケーブル(Coil Cable)が正しい名称で、Fender社の製品では(Koil Kable)なんてお洒落に韻を踏んでいます。SANTANA のアルバムにも“Zebap! ”という Bebap をもじったタイトルがありましたが、日本人だと思いついても怖くてできないですね。

 

脱線しかかりましたが、70年代までは割とスタンダードに使われており、Jimi Hendrixは L形プラグを挿して器用な使い方をしていましたし、Carlos Santana はWoodstockのステージで、アンプ直挿しにビロ~ンと伸ばして使っていたのが印象的です。

特に Carlos Santana は、YAMAHA SG のお供に 80年代中頃まで使っていたので、よほどのお気に入りだったのでしょう。

私が練習用以外にライブでもカールコードを使い始めたのは、Gibson SG を使い始めてからです。L形プラグで手元がすっきりし、足元で絡みにくいというのがその理由でした。

 

カールコードは見た目より実長が長く、現在愛用中の VOX製は公称 9mもあります。

抵抗値は高く線間容量も高いうえ、コイル状でインダクタンスの影響まで重なるのですから、(Hi-Fi的な要因から)音が良いわけはないのです。

ストレートの 3m辺りとつなげ替えれば、大抵の人は分かります。

それでもなお愛用し続ける理由は 2つ。操作性とルックス! これに尽きます。

最初のお友達:ノーブランドのカールコード

いわゆる“オマケ”です。最初に買ったギター※)に付属していたもので、これを同じく最初に買ったアンプ※)に挿して、使っていました。

すぐにエフェクター等を使い始め、後述のケーブルを使い始めたために使用期間はそれほど長くはなく、ギターのハードケースにしまいっ放しになっていました。だから入手から40年近くを経ても、手元に残っているわけです。

こいつにケーブルとしてのスペックを求めるのは、野暮なことだと思います。

品質よりも思い出の方が、私にとって重いからです。

若干15歳の私は、ギターとアンプとこいつだけで限りなく幸せでした。

※)ギター:Aria proⅡ ST-500BS アンプ:Guyatone GA-380

2番目のお友達:ノーブランドのカールコード 2

当時(70年代末)、まともなカールコードというのはあまり流通していなく、結構探した覚えがあります。

 

同時期 HEXA(Greco)が商品化していたはず(それも S-L形)で、入手も容易だったとは思うのですが、何故かそれとは巡り合っていませんでした。

 

ストラトには使い易かったのですが、SGやレスポールには今いちだったので、3番目のは L形プラグを付けて専用化しました。出てきたら掲載します。→ 出てきました!

実用に向けてのカスタマイズ精神が、早くも芽生えています(笑)。

 

“まともなカールコード”とは書きましたが、未だこの時代の製品は芯線への導電ビニルコーティングなどは無く、普通のシールドケーブルが使われていました。

3番目のお友達:ノーブランドのカールコード 3

上記で書いていた 3番目が、たぶんこれだったと思います。

本当は L形プラグには、Switch Craft #228 を使いたかったのですが、当時は今とちがってどこの楽器屋にも置いてあるような代物ではなく、秋葉原に行っても 1,000円以上したと思うので、高校生には高嶺の花でした。

 

普通に入手できる国産メーカーの L形プラグは、マルシン製のものがスタンダード。

でもそこはちょっと拘って、KENY(オーム電機)製のを探し出してきて付けています。

スプリングがケーブルとの一体感を出していて、当時はこれで満足していました。

エレハモ(Electro Harmonics)製 @ 高校生時代の憧れ。

カタログを指をくわえて見ていただけの、エレハモ製カールコード。入手したことは無く今でも欲しいです(笑)。

見るからにヘビーデューティーで、これぞプロ仕様?みたいなオーラを発しています。情報は今よりずっと少ない時代、海外のプロはみんなこれを使っているのだろうか?と、勝手に想像を巡らせていました。

この時代(1979年)で 4,400円は、高校生がケーブルに出せる金額ではありません。また売っているのを見たこともありませんでした。

今のお友達:VOXのカールコード 1

時代は今に飛んで、これを使っています。

 

VOX製とは銘打っていましたが、明らかに国産とわかるプラグに“VOX”の刻印が刻まれているという、和洋折衷の製品でした。これは初代の製品で、カールの直径が小さくケーブルの被覆(シース)がつや消しなのが特徴です。

 

私の仕様は、ストレート(S形)プラグ側を Switch Craft #228 に交換し L-L にしてあるのがスタンダードです。またケーブルの色にマッチする、熱収縮チューブの色を選ぶことも楽しみのひとつです。高校生の時の夢、そのまんまですね(笑)。

今のお友達:VOXのカールコード 2

こちらは現行の“VOX Vintage Coil Cable”です。

 

モデルチェンジ後はカールの直径(巻き)が大きくなり、被覆がつや有に変わりました。またプラグも一体形の樹脂成型に変わり、金メッキが施されています。

これはシースがシースルー・クリアーで、アミ線が透けて見えるというお気に入りの1本です。

紹介したのは代表的な2本で、他にも各色・各仕様の 5~6本が待機しています。

VOX Vintage Coil Cable の変遷

2014年も終盤に向かいつつある今日では、シールドケーブルも百花繚乱となって選びきれないほどの品種が出回っていますが、1990年代の初頭にあって OFC(無酸素銅)を採用したケーブル自体は、まだまだ高級品の位置を占めていました。

そんな中で OFC を採用したカールコードの登場は、とても奇特に見えたものです。

VOX → AC30アンプ → Brian May → カールコード というイメージの連鎖でしょうか?

 

VOX といえば “ブリティッシュテイスト” あふれる伝統の機材ブランドですが、初代の製品からは、何故かそれはあまり伝わってきませんでした。

VOX の刻印は施されていたとはいえ、国産のスタンダードであるマルシン製のプラグが採用されていたせいかもしれません。でも公称10mの使い心地は、なかなかに良好でした。

いつの間にかロングセラーになった “VOX Vintage Coil Cable” が、いつの間にかモデルチェンジされていました。マイナーチェンジと書きたいところですが、下記のとおり継承されている部位が一か所もありません(苦笑)。

 

1.全長(公称):10m → 9m(カールコード長の実測は不可能)

2.直径(実測):5.5mm → 6mm

3.コイル部の径(実測):20mm → 25mm

4.シースの仕様:つや消し → つや有

5.シースの印字:書体・文字間の変更

6.プラグ:既製品へのVOX刻印 → オリジナル樹脂モールド形状

7.プラグのメッキ:ニッケル → ゴールド

 

私は特に新旧の使い分けをしていませんが、あえて挙げれば色合いの使い分けですね。

余談ですがプラグ交換のモデファイは、旧製品の方が格段にやりやすいです。

余計な情報かもしれませんが、旧製品と現行製品を電気特性的に比較してみました。

公称:10m と 9m という長さの違いは顕著に出ませんでしたが、現行製品の方が僅かにインダクタンスが低いのは、巻きが緩い(大きい)ことと関係するかもしれません。

いずれにしても微々たる差でしかなく、個体差の範囲に収まってしまうかもしれません。

 

旧製品  → 直流抵抗:1.2Ω、インダクタンス:0.006mH、線間容量:0.964nf

現行製品 → 直流抵抗:1.3Ω、インダクタンス:0.005mH、線間容量:0.809nf

 

※ 気温24℃ にて無改造品を測定。従ってプラグの抵抗や容量も測定値に含まれる。

どちらかといえばコレクション 1:picato Coil Cable

picato は、絃で著名な英国の楽器アクセサリーブランドで、1990年代は Aria(荒井貿易)が代理店でした。

 

その取り扱いアイテムの中に 1点だけケーブルがあり、それがこのカールコード(6m)です。

プラグのスリーブ部をブラックメッキするという、他社製品に例のない特徴を有していますが、それが必要とされた理由がカタログのどこにも述べられていないのが変っています。というか、謎です。

カールの直径(巻き)は大きめ。キャップ部は厚めの金属製で、Aria のロゴがモールドされたブラックの樹脂でコーティングされており、見た目より重厚な手応えがあります。

6m という長さが私にとっては中途半端に短いのと、前述のブラックメッキされたスリーブがクリーニング(研磨)に適していないため、サンプルというかコレクションに留まっています。Ariaロゴのモールド以外の表記や印字が一切ない、非常に寡黙な外観です。

どちらかといえばコレクション 2:Providence LE502C

数々の優れた製品を、10年以上に渡ってラインナップし続けているケーブル界のモンスターブランド Providence。

LE502C はその中でもエコノミーバージョンである Silver Link Series の一員で、かつ唯一のカールコードです。

 

導体には上位製品から継承された OFC が採用され、見た目よりは実長の長いカールコードの欠点を補っています。

音質的には申し分ないのですが、私的にはプラグが S も L も華奢。L の方は Providence を象徴する 91°角のついたオリジナルではなく、マルシン製の汎用品を装備しているのが、どうして? というところです。EIA規格の方が適合面で有力視される楽器用ケーブルで、あえて JIS規格のプラグを採用する意図(決してマルシン製が劣っているわけではない)は何なの?と言った方が適切かもしれません。S も L もプラグを替えてしまえば使い勝手は上がるのでしょうが、それをやってしまうと Providence製ではなくなってしまうような気がして、こちらもサンプルというかコレクションに留まっています。

ケーブルのシースやプラグのキャップにもブランド名が印字され、上掲とは対照的です。

どちらかといえばコレクション 3:Ki-Sound Coil Cable

Ki-Sound は、韓国の楽器アクセサリーブランドで、キャップが木製の個性的なギター用ケーブルや、マイクケーブル等をリリースしています。

 

これは同社のラインナップにあったカールコードですが、最近のHPを見るとディスコンになってしまったようで、仕様の詳細について知ることができないのは残念です。

上掲の Picato に通じる樹脂でコーティングされたがっしりしたプラグが特徴で、先端のTip の形状を見る限り EIA規格で作られているようで、世界的な販売を狙った製品であることがうかがい知れます。

ケーブルのシースには長々と “ Ki-Sound Instrument cable High-performance with noise Reduction and Superior Durability Technology ” (原文ママ)と印字され、まぁこれだけでも良質のサウンドと耐久性を謳った高品質ケーブルであることは伝わりますね。