番外編 愛すべき 100円パッチ!(廉価版パッチケーブル)

エフェクターが未だアタッチメントと呼ばれていた1970年代では、エフェクターそのものの筐体が大きく、Wah-Wah と Fuzz だけとか、繋げる数量も 3台あれば多い方と言われる時代でした。70年代も中盤を過ぎ、クロスオーバー(フュージョン)が流行ったりしてスタジオミュージシャンに注目が集まると、どんな要望にも応えられるよう、あらゆる機材をボードやラックに組み込んで備えるというシステム化にも、脚光が当たりました。

 

米国の MXR が嚆矢となってエフェクターのコンパクト化が進むと、日本のメーカーはそのお家芸を発揮して廉価・改良版を続々と発売し、高校生だってちょっと頑張ってバイトすれば、BOSS や MAXON のエフェクターを5~6台所有することなど、夢でもなんでも無くなってしまうという、面白くも恐ろしい時代へと変わって行きました。

 

こうしてギタリストの足元にエフェクターがずらりと並ぶようになると、併行して需要が生じたのが、パッチケーブルです。当時は今ほどケーブルへの拘りが無かった時代なので、パッチケーブルは割と軽く見られており、ちゃんと音が出さえすれば(断線や接触不良が無いこと)安価なものが歓迎される時代でした。エフェクターを買えばオマケでもらえたり、楽器量販店の特価コーナーでは 100円均一で山積みされていたものです。

“100円パッチ” の愛称は、そんな時代に生まれました。

もちろん全てのパッチケーブルが “100円パッチ” と呼ばれていたわけではありません。

そこにはちゃんと定義があって、

 

①パッチケーブルでは最短サイズと言われる、15~20cm程度の長さであること。

②プラグのキャップが樹脂一体成型であり、ケーブルのシースの色と同色であること。

③ブラック以外にも、レッド・イエロー・ブルー 等のバリエーション豊富であること。

 

などの条件を満たすものが、“100円パッチ” と呼ばれていたわけです。

中には 100円以上で売られていたものもあったでしょうに、不名誉な話です。

 

驚きました。“100円パッチ” だけで、これだけの前置きが書けるとは思いませんでした。

本題に入る前に、もう少し書き進めてみます。

 

<100円パッチの長所> → 意外にもたくさんあって、書いていて驚いた…

①安価であり、同じ規格のものを多数揃えられる。

②柔軟性のある製品が多く配線の取り回しがしやすい。

③軽量で移動の負担を軽減できる。

④樹脂製キャップのため絶縁性が高い。アースループを未然に抑止できる。

 

<100円パッチの短所>

①断線したら修復不能で廃棄するしかない。→ ショートプラグ等、再利用途もあるが…

②ジャックとのマッチング(篏合:かんごう)に当りはずれのリスクが大きい。

③どんな線材を使っているか? プラグと線材の接合方法など、一切明らかにされない。

④エフェクターと色を合わせても、隣のエフェクターにマッチするとは限らない(笑)。

 

当時から人気のスタジオミュージシャンで、今は大御所となった某ギタリストも、当時の写真で足元を見ると、エフェクターの接続に “100円パッチ” を多用していましたョ。

やっと最初のご紹介:赤絶ゴーヤーシリーズ

チップ・リング間の絶縁リングに赤色の部品を使い、キャップにゴーヤーを思わせるすべり止めのボツボツが成型されているところから、私が勝手に命名しました。

私の所有する “100円パッチ” の中でも一大勢力で、実に全数の 4/3 を占めます。

写真のとおりカラーバリエーションも豊富で、L-L タイプ以外に、S-S タイプもあります。例外として、左端のように絶縁リングが黒色の製品も存在します。

長さのバリエーションもいろいろあるのですが、このコーナーでは割愛します。

一見して同じ仕様にも見えるのですが、何回か金型を作り替えたようで、ゴーヤーボツボツの面積や範囲が異なるなど、微妙な形状の差異を確認できます。

右端のプラグには LEEM という刻印も確認できますが、ブランド名でしょうか?

この刻印は必ず両端のプラグに付いており、片側だけということはないようです。

2番目のご紹介:その他もろもろ

その他の “100円パッチ” は、脈略もなく種々雑多に買ったものばかりで、シリーズと呼べるほどのものは所有していません。

その中から、ほんの一部をご紹介します。

中には曲げ癖が取れないものもあって、撮影を見送ったものも多々あります。

 

最下段のものは、他のパッチより少し長いうえに、キャップの形状が Fender社のオリジナルプラグにちょっと似ています。

 

おまけ:BOSS のコイルパッチ

いつ何処で入手したのかは失念しましたがBOSS のノベルティグッズとして配布されたものであり、非売品だったのではないかと思います。

よく見ると、ケーブルはあの #2524 で著名な MOGAMI 製です。さすが BOSS。ノベルティでもマテリアルは一級品ですね。

ユニークなのはプラグの形状で、いったい何を模ったものでしょうか?

ボス(親分)の葉巻にも見えますが…