<The Red Label 期 AD(Advertise:広告)ギャラリー>
1972年に産声をあげた Pignose 7-100 は、The Legendary Pignose(伝説のピグノーズ)という新製品らしからぬキャッチコピーと著名ギタリストの使用によって、瞬く間にポータブルアンプを象徴する機種へとその名声を高めて行きました。
発売時から Rolling Stone や Guitar Player などの音楽専門誌にADを掲載していたので、そちらの方面からも Pignose 7-100 の足跡を辿ることができます。
私の入手したADは極めて限られた種類ですが、Vol.1 のレッドラベル本体の変遷と併せてご覧いただくと、興味深いかもしれません。
1973年に発表された、おそらく最初のADです。
あまりにも有名な、 “The Legendary Pignose”
というキャッチコピーが、発売当初から大々的に用いられていたことがわかります。
このADは複数の音楽誌に掲載されていましたが、Rolling Stone誌など大判の誌面には原寸大写真で掲載されていたことでも、話題となりました。
※)Guitar Player誌などでは縮小版であった。
最初期の Pignose 7-100 は、かの CF Martin社がディストリビュータ(販売代理店)を務めていたことも意味深で、この紙面には Pignose社の所在が掲載されていません。
Rolling Stone誌(1974年5月)に掲載されたADで、「とてもよく働くアンプ」要は引っ張りだこのアンプというコピーのもと、スタジオから野外まで多方面での活躍例が紹介されています。
このADでは未だCF Martin社がディストリビュータ(販売代理店)として記載されているものの、紙面の左下に小さく書かれているに留まり、代って Pignose社の所在がロゴの左側に大きく掲載されるよう、変化が見い出せます。
使用ミュージシャンとしてたくさんの著名アーチストも名を連ねていますが、ギタリストに留まらず、キーボーディスト名も見い出せることから、幅広い層からの支持を謳っているのでしょう。
願わくば一台でも多く、今でも彼らのフェイバリットアンプでありますように…
Pignose 7-100 とミュージシャンとの関係と言えば、レコーディングで使用した Eric Clapton と、PRや経営面で表に出た Chicago(バンド)の名ギタリスト Terry Kath が二大巨頭でしょう。
これは Pignose社のスポンサーの一人が Chicago のプロデューサー Jimmy Guercio であったことと、Chicago の Los Angeles 進出が、大きく関係しています。しかし経営権は早くも 1974年中にこのバンドの会計士に譲渡されてしまいます。
Pignose社自体は 2001年に Las Vegas に移転するまで、その後も Los Angeles とその近郊を拠点にした活動を続けました。
※)Terry Kath は、このADから約4年後の 1978年1月に惜しくも事故で他界しました。
1977年 Guitar Player誌に掲載されたADです。
上掲のADと大きく相違するところは、本体の写真が Narrow Forehead(狭額)に変わっており、ディストリビュータであった CF Martin社の記載も無くなって、Pignose Industries社による直接供給が開始されていたことが分かります。
それにしても、能書きの少なさでは歴代のAD中で随一を誇るほど、簡潔で美しい紙面ですね。私はこのアンプのベストアングルだと思っています。
Pignose 7-100 単体でのADは、おそらくこれが最後となり、以降は他の新製品に便乗したラインナップの紹介として掲載されるに留まってしまうことは、とても淋しく思います。
1979年 Guitar Player誌に掲載されたADです。
Pignose は、練習からレコーディングまで活躍する手軽なアンプであることが謳われています。
一見すると主力のラインナップを撮影しただけに見えますが、よく見ると 7-100 の方は3台ともにエンブレムが水平に配されている個体であることに驚かされます。(驚いたのは私だけかも…)
Vol.1 のレッドラベル本体の変遷でもご紹介した #334XX が 1978年12月製なので、正にこの時期に水平エンブレムの 7-100 が集中して出回っていたことを裏付ける、貴重な ADとなりました。
女性が抱えるギターは、特徴的なヘッドの形から Gibson L6-S であることが分かりますね。
“NAMMショー” ブース6095 で会いましょう!
1980年 Guitar Player誌に掲載されたADです。
豚面のロックスターが、ステージでもオフステージでも「俺はピグノーズだぜ!」とメッセージを発しているシュールな写真が特徴です。
Pignose社ではポータブルアンプ 7-100 の売上が徐々に下降線をたどり始め、その売り上げだけでは先行きが心もとなくなったのでしょう。
起死回生の新製品として 30/60 というミドルクラスのアンプを送り出してきました。その名のとおり、平常30Wでピーク時に60Wの出力を発揮する性能を持っています。米国ではそこそこのセールスだったのでしょうか? AC:100V の日本仕様で輸入されたという話は、残念ながら聞いたことがありません。
Pignoseポスターを3ドルで送るよ。と書いてありますが、これのポスター版でしょうか?
こちらも 1980年に Guitar Player誌に掲載されたADですが、時期は少し後になると思われます。
というのは、記載の住所が LA市内から郊外の都市に変わっていることからの推測です。
位置づけ・内容としては上掲のADと変わりないのですが、イメージ先行だった上掲に対しこちらの方は、商品内容の説明に終始しています。
アンティークの風格すら漂う 7-100 に対し、気鋭の 30/60 の方は、Roland の Sprit-Series に通じる当時の“今風”というか、ごく普通のアンプという域を出ていないように感じてしまいますが…
“NAMMショー” ブース319 で会いましょう!
これはADではなく、DM(ダイレクトメール)なのですが、またも新しい住所に変わっていることから、上掲より後に発行されていることが分かります。おそらく 1981年以降のことでしょう。
深刻な販売不振からか、工場直売という捨身ともいえる販売攻勢には怖さすら感じてしまいます。
よく見ると、7-100 の標準小売価格は$149.50.と記載されています。遡って Terry Kath のADを参照すると$89.95.。何と 7年間で 60ドル近くも値上がりしてしまったことになります。
オイルショックや世界的な物価の高騰など様々な要因は、じわじわと伝説のアンプの生産を蝕んでいたのですね。このDMの直後に Pignose社は営業を停止。Red Label の生産は打ち切られます。
おまけ①:“Piggy In A Box” Box Art
Piggy In A Box は Pignose 7-100R の中身をそっくりそのまま Stomp Box(エフェクター)化したもので、アンプにつなげれば Distortion,Ove-
rdrive,Pre-Amp. として働き、スピーカーをつなげれば Pignose 7-100R アンプとして使えるという、親製品の存在を脅かす?優れものです。
本体は透明プラカバーのかかった凹形の箱に入って販売されていますが、その箱の裏面いっぱいに印刷されているのが、このイラストです。
完全にヒートアップした状態でバギー車を駆っている豚君が、このエフェクターから出る“オーバードライブサウンド”を表しているのでしょうか?
前述のとおり汚れやすい場所に印刷されているため、買ってすぐにスキャニングしておきました。
筐体はこんな外観で、はがきの縦を 1cm くらい長くしたサイズ。各機能を箇条書きにしただけの、えらくシンプルな説明書が一枚付属しているだけです。
Pignose 7-100R との大きな相違点は、豚鼻を Pull(引っ張り上げる)するとブーストでき、歪(ひずみ)が一段と深く掛かります。強いて難を言えば、豚鼻とフットスイッチが近接し過ぎていることですかね?
おまけ②:Pignose Warranty Card Art
Vol.6 の歴代 Warranty Card のコーナーでも触れましたが、生産が香港から中国に変わってからは他製品との共用が無くなり、Pignose 製品専用の Warranty Card(保証書)が新規に用意されています。ここでの豚君は、目を回した状態(多分にイっちゃっている感あり)で描かれており、Piggy In A Box の豚君とはまた違った感じでぶっ飛んだ様子(苦笑)が表現されています。
いろんな表現や解釈が生じているということは、Pignose という品名の語源が、メーカーの方でも定義づけられていないということでしょうかね?
別に謎は謎のままでも構わないのですが、依頼されたイラストレーターは頭を抱えたのでは?
おまけ③:Pignose Red Label Vintage Sticker!
米国から到着した 1970年代のオリジナル 7-100(レッドラベル)を開梱すると、中から思いもよらぬグッズが出てきました。
500円硬貨を二回りほど大きくしたサイズの、可愛らしい Pignose Sticker です。
右縁にかけて僅かなヨレがあるのが残念ですが、全体のコンディションは良好です。これ 1枚だと勿体なくて、やたらと貼ったりできないのが悔しいですね。
<後日談>
よくよく見れば、あの Terry Kath の愛用 Telecaster にところ狭しと貼りまくられていたステッカーそのものですね。彼の場合、本来は捨てられるべき枠の部分だけでも貼っていたのがご愛嬌でしたが… Pignose の歴史にいわくあるグッズなので大切にします!
おまけ④:Pignose Knob-Keyholder
これも完全にグッズの領域ですね。
リイシュー7-100R のノブをそのまま使った、なんとも小粋なキーホルダーです。
ベースのプレートに 6Φのシャフトが溶接されており、そこにアンプ同様にレンチで締めて固定されているという、ヘビーデューティーな構造が、これまた泣かせます。
ってことは、万一アンプのノブを紛失した際に、スペアに使えるってことですね。
そこまで織り込み済みだとしたら凄い深読みだけれど、まぁそれは無いでしょう(笑)。
おまけ⑤:Pignose Carl Cord 6m
アンプ(7-100R)の関連製品と言っていいのか、ギター(PGG-200)の関連製品と言うべきか、どっちもでしょうかね?
ラベルの表記にもあるとおり、完全に日本の代理店が企画した商品なので、おそらく米国での流通は無いものと思われます。
プラグも JIS規格の製品が使われていますが、今日ではアンプもギターも UL規格の部品は使われていないため、マッチングの問題は全く起きないでしょう。
アジア勢力の席捲恐るべしですね(笑)。
申し訳ないですが、どこをとっても全く廉価版のカールコードと変りありません。
と思ったら、ケーブルに Pignose の印字を見つけ、ちょっぴりほっとしました。