<レッドラベル期のスピーカー #7-201 の変遷を追う>

Red Label 時代のオリジナル 7-100 に使われたスピーカーは、生産された約10年間を通して、最末期である 45000番代くらいから初期の再生産モデルである Black Label 期にかけて僅かな仕様変更が行われたくらいで、非常に安定した仕様が続いていました。

その特徴は、

1.マグネットの中心に Voice Coil の芯と思われる、大きな円が浮き出ている。

2.234824 または 234824R という型番がコーン紙に印字されている。

3.入力端子右側のステーに、直径 5mmくらいの赤いドットがマーキングされている。

4.45000番代以降、マグネットの中心に4つの小さな円が追加された仕様に変わる。

5.Black Label 期になると型番の 7-201 が、マグネットに印字されるようになる。

  マグネットの仕様やステーの赤いドットは継承されている。

   7-100 Red Label    同最末期(#47000番代)   7-100R Black Label

こまかいところ…

① 234824R と鮮明に印字されている。印字に定位置はなく、Rの有無の意味は不明。

②ステーにマーキングされた赤いドットが見える。しかしドットも印字もやや不鮮明。

③こちらはドットも印字も大変鮮明なうえ、イエローで印字されたレア仕様!

④ Black Label のスピーカーは、印字以外 Red Label 最末期の仕様を継承している。

<ホワイトラベル期のスピーカーの変遷を追う>

極初期の再生産モデルである Black Label が各所に Red Label の仕様を濃厚に残していたのに対し、White Label 期に入ると独自の部品調達が進んだのか、ひとつの仕様としての確立が見られます。スピーカーにおいても、一目で White Label と判る特徴を備えるようになりました。それについても Red Label 以上に長い生産期間を経て変遷が見られます。

その特徴は、

1.当初はマグネットの中心にあった大きな円が、丸ごと消滅してフラットになる。

2.88年製あたりから、マグネットの中心に小さな円が “くぼみ” として復活する。

3.マグネット側面の端子側に “MADE IN TAIWAN” のシールが貼られるようになる。

4.95年製あたりから、3桁の数字が白でスタンプされるようになる。

5.99年の中頃からステーの形状が大きく仕様変更され、その間隔が細かくなる。

 7-100R White Label 最初期    同1989年製        同1999年製

<キャビネット・掛け金(Latch)の変遷を追う>

個性的な開閉式キャビネットを持つ Pignose 7-100 の要(かなめ)ともいえるパーツが、この掛け金です。

その耐久性は大したもので、私が Junk品で入手した個体でも、掛け金が壊れていた例(ためし)が無いほどです。

米国~台湾~香港~中国と生産拠点が移るにつれ、現地で調達するパーツとして例外なく仕様変更が生じていますので、本体の変遷の推移と併せて追ってみます。

オリジナル 7-100(Red Label)本体の仕様変遷については Vol.1で述べましたが、掛け金については最終仕様まで変化を見い出せないできています。

刻印が示すとおり、この掛け金は既製品もしくは特注品※)を採用したものです。

左側の山形に付けられた緩やかなカーブやエッジの整った正確なプレス成型など、パーツに至るまで、いかにも “古き良き米国製品” の風格を味わえて楽しいですね。

※)コネチカット州スタンフォードにある、錠前の老舗 “エクセルシオール社” の製品。

  Gibson製ギターのハードケース等にも、幅広く採用されている。

リイシュー最初期 7-100R(Black Label)からは生産が台湾に移され、それに伴って各部パーツも現地調達となったようです。

掛け金も例外にもれず現地で型を起こして(上掲のコピー品を)製作させたようですが、なかなかどうしてリイシューの名に恥じない出来映えで、復刻版にかける心意気が伝わってきます。強いて難を言えば、リングの付根が広がっていて、少し遊びが大きいところくらいでしょうか…

リイシュー第2期 7-100R(White Label)になっても、掛け金は Black Label の仕様が引き継がれており、同じプレス型で生産されたものと思われます。

しかしよくよく見ると、リング付根の右側にあったナマコ状の突起が消えかかっているのが分かります。Vol.3の本体の項でも述べましたが、型が鈍って形状が緩くなったというより、型を埋めて形状を消した形跡があります。いったい何故でしょうか?

リイシュー第3期 7-100R(White Label)

になると、掛け金は新しい型で作り直されています。リイシュー第2期までの仕様に比べて形状の簡略化が進み、左側の山形のカーブやリング付根の絞り込みがストレートになる等、残念ながらオリジナルの形状からのかい離が進んでしまいました。

しかしこの仕様(プレス型)はその後長命を誇り、香港生産が終了する 2010年頃までおよそ12年以上、使い続けられました。

リイシュー第4期 7-100R(White Label)は、いよいよ中国生産に移行後の姿です。

下記の“ブタ鼻ノブ”をはじめ、外装の金属パーツが揃って型を一新し、クロームメッキ化したため、大分様相が変わりました。

掛け金は、プレス型を作り直すと同時にデザインにも手が入ったため、先に紹介してきた緩やかな形態変化からは、逸脱した雰囲気を有しています。デザインとメッキのせいか、幾分硬質になったイメージです。

<ブタ鼻ノブにも変遷があった…>

Pignose 7-100 一族の象徴である「ブタ鼻ノブ」。中古品でもこれが欠損しているだけで価値が下落してしまう。というより、ピグノーズ・アンプがビジュアル?として成り立たなくなってしまうほど、外観のキモになる重要なパーツです。

さて私もこのパーツには大きな変遷はないだろうと高を括っていたのですが、各バージョンの点検をしているうちに、大なり小なり実に5段階もの変遷を見つけてびっくり。

ディープなところに入っては行きますが、意外に重要なポイントを含んでいるんですよ。

特にネジとレンチの規格は要マーク。適合を確認してネジを壊さないように気をつけて!


先ず共通事項として、素材は亜鉛ダイキャスト、仕上げは⑤を除きニッケルメッキです。

写真では反射を防ぐためにやや酸化の進んだ個体を選別していますが、メッキの状態が良い個体でも、クロームメッキを思わせるような、質感の差を感じさせるものがあります。

ひと口にニッケルメッキといっても、方法やグレードに何種類かあるのかもしれません。

オリジナル 7-100(Red Label)のノブです。裏面の縁に PIGNOSE INDUSTRIES.INC

  ©1973 TM の刻印があり、識別は容易です。全ロットを通して同じ型のものが使われ

 ていましたので、1973 の刻印があっても製造年代を特定する根拠にはなりません。

 ※ 初期に作られた物は型が若いため、刻印がシャープなのは大まかな目安にはなる。

 シャフト穴径:1/4インチ、イモネジ規格:#6-32、六角レンチサイズ:1/16インチ

リイシュー最初期 7-100R(Black Label)のノブです。生産国が台湾に移ったため、掛

 け金同様に現地生産となったようで、正面からの形状はほぼ同じながら、裏面の形状の

 違いから型が起こし直されていることが分かります。特記事項として規格がメトリック

 に変ってしまい、シャフト径が小さくなって①と互換が効かなくなってしまいました。

 シャフト穴径:6mm、イモネジ規格:4mm、六角レンチサイズ:2mm

リイシュー第2期 7-100R(White Label)のノブです。②と同じかと思ったら、イモネ

 ジの規格が変っていました。見る限り型は同じですが、変更の必要性が分かりません。

 シャフト穴径:6mm、イモネジ規格:3mm、六角レンチサイズ:1.5mm

リイシュー第3期 7-100R(White Label)のノブです。香港製になってまたも変更が生

 じ、今度はシャフトの穴径がインチ規格に戻って①との互換が効くようになりました。

 必要性の云々は別として、全バージョンへの補修に使える理想的な規格になりました。

 シャフト穴径:1/4インチ、イモネジ規格:3mm、六角レンチサイズ:1.5mm

リイシュー第4期 7-100R(White Label)のノブです。生産国が中国に移り、大々的に

 仕様の見直しが行われた中、ノブも例外なく作り直されました。特記事項は、仕上げが

 クロームメッキになって質感が一変したこと。シャフトへの取付方法が、ネジ止めから

 ローレット式(押込形)に変ったことで、裏面の形状も原形を留めなくなりました。

 これは、Pignose PGG(ポータブルギター)が製品化されたことで、それのノブと共用

 の必要性があったものと思われます。

 シャフト穴径:6mm ローレット式(別称:スプリットシャフト)

<ケース内ラベルの、パテント関連の印字>

Red Label の中期から、箱内にパテント関係の黒いラベルが貼られるようになります。

おそらく18000番代の直後になってからのことで、Red Label 終盤に近い 47000番代でも貼られていることから、生産終了の直前まで貼り続けられました。しかしストックが尽きたためか、ラストに近い(と思われる)製品には貼られていないことが確認できます。

途中パテントナンバーが一つ増えたことで、アップデイトされたことが確認できます。

1.18300番代 ~ 22000番代にかけて

2.23000番代 ~ 最末期(48000番代?)にかけて

リイシューの 7-100R になってからは、同位置の黒いラベルではなく、Black Label や White Label そのものに(詰め込んで)表記されるようになりました。

そのため、ラベル内の情報が Red Label に比べて、ややゴミゴミとしています。

<レッドラベル期の ACアダプタ #7-203 の変遷を追う>

現行の 7-100R ではオプションとなっている ACアダプタは、レッドラベル 7-100 の販売開始当初は、標準装備でした。1970年代後半からオプション化されたようですが、明確な時期は特定できていません。別項に本体価格の高騰を記載したくだりがありますが、初期は ACアダプタも含まれていたので、相当リーズナブルな価格設定だったのですね。

生産全般を通して変更点はそれほど多くありませんが、最大の変更点がプラグ径を 2.5Φから 3.5Φに太くしたことで、早々(#7000番前後)に実施されています。

2.5Φが楽器用品の仕様として華奢すぎることは、写真からもお分かりかと思います。

1.レッドラベル #38XX 付属の ACアダプタ

  ①表面。

  ②裏面。

  ③2.5Φのプラグは細く華奢に感じます。ケースには MADE IN JAPAN のモールド。

  ④ラベルの表記類が品名のみで、あっさりしているのが特徴です。

2.レッドラベル #52XX 付属の ACアダプタ

  ①表面。

  ②裏面。

  ③プラグは 2.5Φのままですが、スリーブがシンプルな形状に変更されています。

  ④ラベルの表記に、UL規格をはじめ定格類が所狭しと記載されるようになりました。

   ACアダプタの品番 7-203 は、この仕様から表記されるようになりました。

<なぜ 7-100 と 7-100R は、大きさがちがうのか?>

筺体の写真を見ても明らかですが、7-100 より 7-100R の方が僅かに大きく、私にはこの微妙なサイズのちがいを必要とされた理由が、分かりませんでした。

何故なら、スピーカーや金具類の規格はほぼ同一で、筺体のサイズを変える根拠には結び付かなかったからです。

ところが意外なところから、あっけなくその糸口は見つかりました。

7-100R モデファイの一環として、PCB(プリント基板)をシャーシから吊るす加工を行った際、4箇所あるビス穴の間隔と PCB のサイズを測ったとき、それがメトリックで設計されていたことに気付いたのです。

さては?と思い筺体の寸法を計測すると、案の定メトリックらしい寸法でした。

 

つまり、米国で設計された 7-100 はインチ規格。香港で生産された 7-100R は、メトリックで再設計されたため、設計を簡易化するために、インチ規格の寸法にとことん肉薄させることはせず、メトリックでレイアウトしやすいサイズに落ち着けたという憶測です。

 

たぶんこれが真相だと思います。これがギターだったら物議を醸したでしょうね(笑)。