*ブラックラベルのコーナー
*リイシュー第1期
<変遷の葛藤 The Black Label ラインナップの異端児>
私の所有 7-100R に、2台の黒いラベルを貼られた個体があります。
これらに年代を示す記載は無いのですが、使用部品等から推測すると 1985年から再生産が始まった直後の、極初期の仕様(リイシュー第1期)とみるのが正しいと思います。
1.パワー段のトランジスタに、未だゲルマニウム形が使用されている。
2.同様に、トランジスタ放熱用のトランスカバーが設けられている。
3.7-100 同様、PNPトランジスタ使用による “プラス接地” 回路を採用。
4.出力トランスの 2次側が、4・8・16Ω とグラウンドの、計 4本足仕様。
5.外部電源への対策として、大容量のデカップリング・コンデンサを追加。
6.スピーカーの仕様が、後の 7-100R とはちがい、7-100 末期の仕様に近い。
7.筺体に使われている金具類が、7-100 とも後の 7-100R ともちがう独自形状。
8.ロゴプレートの、P側の下がり具合が、7-100 と 7-100R との中間程度。
9.スピーカーグリルの生地が、ジュート(麻布)から目の細かいナイロン製に変更。
電子部品の調達事情は分かるとして、金具等のハードウェアについて、Black Label期とその後に続く White Label期に仕様の変遷が生じたことを不思議に思います。
これらは“型物の成型部品”ですから、形状変更は型の作り直しとなり、たいへんコストが掛かるからです。普通なら生産工場は変わっても、型の譲渡は行われるわけで、ここに、再生産品でありながら Black Label期と White Label期との「断絶」を感じる次第です。
生産工場が変わると同時に、大幅な設計変更とコスト削減※)が行われたのでしょう。
※Black Label の仕様は、White Label よりも、部品数も作る手間も多く掛かる。
最初のご紹介:1千番未満(検体 №08XX)
7-100 Red Label の仕様を多分に引き継いでいます。
フロントフェイスの寸法は、Narrow Forehead(狭額)期とほぼ同じで、スピーカグリルの生地とInput ジャックのナットが小さいことに気付かなければ、Red Label と見まちがえてしまいます。
※)Black Label の方が筐体が 5mm程厚くなっている。
スピーカも Red Label 最末期と同じ仕様ですが、識別点として 7-201 を始めとする型番がコーン紙ではなく、マグネット側に黄色でスタンプされていることが特徴です。
製法の変遷としては、PCB(基板)で全ての配線を押さえる方法に変わっています。
Red Label 期にはグラウンドと一部の配線のみが PCB の下を通っていましたが、Black Label では全ての配線が PCB の下に入っています。
2番目のご紹介:1千番代(検体 №10XX)
1千番代になっても、フロントフェイスの仕様に変化は見られません。
白眉とも言える極めて特徴的な仕様は、トランスカバーをはじめとする PCB(基板)一式が、シャーシからの吊り下げ式に変更されている点で、この仕様は後にも先にも Black Label のこの時期だけにしか確認できません。
1番目で述べた PCBで配線を押さえる製法が、生産現場で嫌われたりしたのでしょうか?
推測ですが、この製法は適切な仕様変更だったにも関わらず、パワートランジスタにゲルマニウム形が使い続けられなくなったため、放熱兼用のトランスカバーも継続できなくなり、あえなく没になったのが真相ではないでしょうか?
この後に続く最初期の White Label では、パワー段はシリコン・トランジスタに変更され、トランスカバーも消滅しているからです。
※スピーカを固定するナットに使われているワッシャは、私が追加したもの。
材料の手配や工場・生産地のちがいなどいろいろ事情はありそうですが、興味深いところです。ひとつ言えることは、7-100R が最初から現行の仕様でスタートしたわけではなく、少しでも 7-100 の仕様を引き継ごうと、葛藤・変遷した足跡があったということ。
その証しが、この “Black Label” の存在であると確信しています。
私が 7-100 も 7-100R も変わりなく愛せる気持ちの原点は、そんなところにあります。