The Legendary Pignose Since 1972
伝説のアンプ Pignose 7-100 のコーナー
これらがどの時代の Pignose 7-100 か、ご存知ですか?
Pignose 7-100 と 7-100R の仲間たちをご紹介します!
<Pignose 7-100 と 7-100R の素晴らしき世界>
ーーー レッドラベル も ホワイトラベル も大好きです ーーー
エリック・クラプトンや、シカゴの故テリー・キャスをはじめとする、歴史的なギタリストの使用で著名なポータブルアンプ “Pignose 7-100”。
私もその魅力にはまった一人で、数台の “Pignose 7-100” を所有し、楽しんでいます。
そんな伝説のアンプ “Pignose 7-100” は、今日でも現行品で入手可能な、稀有な存在であることを、ご存じでしょうか? 荒井貿易ホームページ Pignoseホームページ
いろいろと由緒・由来の能書きを書きたいところですが、ここはピグノーズ・ヒストリーの方に詳細に語られておりますので、ご参照いただきたいと思います。
要約しますと、“Pignose 7-100” 一族の仕様は、
1.1972年に僅か 65台製作され、ミュージシャンに進呈されたという、限定 7-100
2.1973~82年の間に生産された USA製。量産オリジナル 7-100(Red Label)
3.1985年から生産が再開された台湾製。第1期リイシュー 7-100R(Black Label)
4.続いて生産された台湾製 Aシリアル。第2期リイシュー 7-100R(White LabelⅠ)
5.香港製に移った 88/~ シリアル。第3期リイシュー 7-100R(White LabelⅡ~Ⅲ)
6.2010年頃から生産を中国に移した、第4期リイシュー 7-100R(White LabelⅣ)
の6種類に大別されます。
限定 7-100は、キース・リチャーズから Pignose社へその #64 が返還されたという1台以外、あまり表舞台に出たことはなく、その解析や実態の把握は進んでいません。
オリジナル 7-100 The Red Label は発売当時から日本へも輸入されていましたが、写真のように 35,000円という70年代のポータブルアンプとしてはかなり高額なプライスで販売されていたため、極めて限られた人の手にしか渡っていなかったようです。
この当時、いったいどれ程の 7-100 が日本に渡って来ていたのでしょうか?私が楽器店で現物を目にしたのは、ほんの数回に過ぎなかったのではないかと記憶しています。
*写真はエイプリル出版刊 Guitar Catalog'79 より抜粋
リィシュー 7-100R The White Label はその点、希望小売価格でも 14,800円と、オリジナル 7-100 が輸入されていた頃から半額以下の極めてリーズナブルな価格帯となり、世界規模で爆発的に普及が進みました。
ちなみに輸入開始当初(90年代初頭)の価格は 左の写真のように19,800円と、今日より 5,000円も高価だったので、これはとっても喜ばしいことです。また 1997年には、オリジナル 7-100 発売から25周年を記念した 25th Anniversary Model が世界限定生産2000台で発売され、初のコレクターズアイテムとなりました。
*左の資料は Aria proⅡ Catalog'94 より抜粋
“BUILT TO LAST”
<リィシュー 7-100R をフォローする!>
ここで、オリジナル 7-100 とリィシュー 7-100R とのサウンドがあまりに違うという指摘が、オリジナルを所有する方(私を含む)から聞こえてきました。
どちらの視点に立つべきか、難しいところですが、私としては先ずリィシュー 7-100R の弁護?をしたいと思います。
1.筺体の構造や部品点数など、仕様の面では、量産オリジナル 7-100 をほぼ踏襲。
2.アンプの回路や部品の定格値等、回路面でも量産オリジナル 7-100 をほぼ踏襲。
3.スピーカーやトランス、電子部品などは、今日入手可能な部品に置き換えている。
オリジナル 7-100 とリィシュー 7-100R とのサウンドの違いの最も大きな原因は、3にあると、私は考えます。それはまた、新たな量産品を組成するうえで、Pignose社は避けられない選択を、強いられたのではないかと思うのです。→ Vol.2 Black Label 参照
先ず考え付くのは、コストパフォーマンスに優れたICによる回路に置き換えられないかという模索。でもおそらく失敗に終わったでしょう。同等のパワーは再現できても、音質や歪み具合は更に別物になってしまいます。高級な方法ではオリジナル 7-100 のサウンドの“エミュレート”もできるのでしょうが、逆に不相応な価格になってしまうでしょう。
そこで、入手可能な部品を使い、極力オリジナル 7-100 の回路を変えないという判断が、なされたと考えられるのです。
私は、オリジナル 7-100 とリィシュー 7-100R とのサウンドの違いを、次の 6点に特定したいと思います。
1.トランジスタの材質(ゲルマニウムとシリコン)
2.トランジスタの相違に起因する、回路の部品定数の僅かな変更点
3.PCB(プリント基板)や配線材の規格・品質
4.スピーカーの品質
5.トランス(ドライバと出力)の品質
6.筐体の微妙なサイズの違い(大きさや材の厚さ)
※トランジスタの構造による違い(NPNとPNP)で、両者の電流の向きは反対になる。
しかしこれが音質の相違の原因とは言い難い。
※ここで使っている“品質”という表現は、物の良し悪しとしてではなく、材質や作りの
違いに起因するサウンドの違いと捉えてください。例えば同じサイズのスピーカーに
おいても、設計思想や構造・材質の違いで同じ音にはならないということです。
エフェクターでも言われることですが、回路は同じでも使用部品や定数の違いは、モロに出音に反映します。Pignose 7-100 のように比較的少量の部品で構成されているアンプには、それが顕著に現れます。ただお断りしておきたいのは、変わるのは音質であって、Pignose というアンプ固有の特性というものは、立派に維持されていると言えるのです。
<Pignose 7-100 の回路とは?>
Pignose 7-100 が登場したのは1970年代に入ってからですが、使われている回路や部品選定は60年代そのものです。60年代製のラジオに多用されていた「プッシュ・プル回路」と称される、トランジスタアンプ回路の中でも、かなり古典的な回路を採用しています。
この回路の特徴は、Hi-Fi的には優れていないのですが、比較的小部品で大出力が得られるところにあります。また、トランジスタアンプの回路自体が余り練られていない時代に、真空管アンプの動作原理をトランジスタに転換して構成したアンプであるとも言えます。
回路図の掲載では伝わりにくいので、ブロック図を用いて説明しましょう。
ギターからの信号は、ボリュームを通って音量制限を受け、最初のトランジスタで電圧増幅されます。ちょうど増幅率一定の内蔵ブースターのようなものです。
次のトランジスタで、後段のパワー部のトランジスタを作動させるための最初のトランス(ドライバ・トランス)を駆動させるための増幅を行います。ドライバ・トランスでは信号の増幅より、信号を正位相と逆位相に変換させる役目を担います。そしてそれぞれの信号(正相と逆相)をそれぞれのパワートランジスタで増幅し、最終段の出力トランスでスピーカーを駆動させる信号に合成・インピーダンス変換され、スピーカーに伝わります。
このように部品点数が少ない回路構成のため、個々の部品が変わると出音へのちがいとなって現れてしまいます。