グレコのハムバッカー 第3ステージ
~第二世代 PUシリーズの登場 Greco PUの円熟期~
U-1000の登場から3年が経過した 1977年の後半。
カタログでいえば Vol.7と Vol.8を境に、Grecoのピックアップの主流が Uシリーズから新しい PUシリーズに入れ替りました。
もちろんそれはフラッグシップモデルについてで、EG700以下のスタンダードモデルについては、これまでどおりの Uシリーズが採用されています。
この数年の間に、米国では DiMarzio社を嚆矢とした「リプレイスメント用ピックアップ」という新しいジャンルが出現し、オリジナル(Uシリーズでいえば Gibson)に比肩する性能に加えて、ピックアップに強い個性のある音色が求められるニーズへと適応させるべく、多様多彩な進化が開始されたのです。
国内で先端を走る Grecoにおいてもそのムーブメントには敏感に反応し、Uシリーズにより強い個性をプラスしてモデファイした PUシリーズのラインナップ充実に着手したのでしょう。
これは私の憶測でしかありませんが、Grecoギターやピックアップをモニターするミュージシャンにも新しい世代が加わり、EGシリーズや U-1000をブレイクさせた成毛滋さんの次世代とも言える、森園勝敏さんや和田アキラさんが、PUシリーズやプロトタイプのユーザーとして名を連ねるようになりました。
PU-0 & PU-04
~初のフル・アジャスタブル & 4コンダクター~
PU-0と PU-2のどちらが先行したのかは把握していませんが、1976年の後半からフラッグシップモデルの標準装備となったことは確実です。フル・アジャスタブルポールピースを装備したハムバッカーの嚆矢は DiMarzio Super Distortion(DP-100)ですが、あえてその特徴的な外観をコピーせずに、オーソドックスなアジャスタブルポールピースが採用されました。そして特筆すべきは Grecoの PUとしてはこれも初となる、4コンダクターケーブル(4芯)バージョンが設定され、コイルタップ等に対応した仕様が求められる時代へと推移しました。奇しくも Gibsonからは、PU-0とクリソツ外観の Dirty Fingers が発表されましたが、3マグネットの独自構造を採用しているところに本家の意地を感じます。
当時 PU-0の愛用者で著名だったのは和田アキラさんで、黒の Les Paul Custom にマウントされた2つのダブルホワイツのピックアップが DiMarzio ではなく Greco製だと知ったときは、ついに国産も米国製に遜色ないところまで来たかと感慨深く思ったものでした。
この他のバリエーションとしては、後期 MR-800に採用された格子のような、独自形状のセミ・オープン仕様 PU-0C がありますが、残念ながら検体としては所有していません。
<1977年製 #271111> PU-0
①ダブルホワイツ U-1000のポールピース側ボビンを2個組み合わせたような外観です。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1977年11月11日(金)と確認できます。
③この角度で撮影すると、ベースプレートの PU-0 の刻印が鮮明に分かります。
未だポッティング(WAX含浸)採用前のため、ベースプレートはすっきりしています。
④ PU-0はマウント時にボビンの極性が分からなくなるので、私は磁石で確認します。
この時代の Greco PU(ハムバッカー)はポールピース側がS極なので、写真で上を向い
ている側を外側にすると、正しい配置にすることができます。
<1980年製 #201127> PU-04
① PU-0 なのですが、4コンダクターケーブル(4芯)なので型番は PU-04 となります。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1980年11月27日(木)と確認できます。
③4コンダクターケーブルの色分けは、Duncan や DiMarzio ともことなる独自の配色で、
青 → Hot1、黄 → Cold1、赤 → Hot2、黒 → Cold2 となります。ポッティング(WAX
含浸)採用後のため、ベースプレート上にも多量の WAXを見ることができます。
④どちらも S極を上にして並べたところですが、実際の極性とベースプレートの PU-0 の
刻印やデイトスタンプの向きとは関係ないことが分かりますので、確認が必要です。
PU-2 & PU-2-4
~ホット&ブルージーなバリエイションモデル~
カタログには「PU-2は PU-0のシングル・アジャスタブルポールピース版です」とあっさり紹介されていたので、サウンドのイメージは変わらないと思われていた方が多かったようです。実際は、ポールピースの長さの違いに起因する磁束の廻りと、金属質量に起因するインピーダンスの違いで、似た傾向ではあっても同じサウンドではありません。
外観的には U-1000と区別がつかないため、ベースプレート裏面には型番が刻印されています。仕様的には U-1000を 10%ほどパワーアップしたうえに、艶っぽい音色が味付けされたとでも表現すれば良いでしょうか? 私の印象では P.A.F.路線からは離れた感じです。
<1979年製 #290404> PU-2(セラミックマグネット)
①ゴールドカバーですが退色はおろかメッキすら剥げて、地金のジャーマンシルバーが顔
をのぞかせています。ここまで弾き込まれれば、ピックアップも本望でしょう(笑)。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1979年4月4日(水)と確認できます。ベースプ
レートが、1979年当時の Greco標準だった3ポイント・マウントに対応しています。
③ U-1000と同じ事情でセラミックマグネットが代用されています。カバーの縦寸が足り
なくて “つんつるてん” になっているところに、痛々しさを感じます。
④フロント用には N.O.の刻印。リア用には B-1!の刻印。いったい何の略号でしょうか?
<1979年製 #290808> PU-2-4(セラミックマグネット)
①カバーを外された状態で入手。ボビンの外観は U-1000と区別がつきません。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1979年8月8日(水)と確認できます。
これもベースプレートが、3ポイント・マウントに対応しています。
③ PU-2 なのですが、4コンダクターケーブル(4芯)なので型番は PU-2-4となります。
4コンダクターケーブルの色分けは、上記の PU-04を参照してください。
④同時期の U-1000と同様に、分厚いセラミックマグネットが使用されています。
ポッティングもされてはいますが、後年よりは薄っすらとという感じ。
<1979年製 #191020> PU-2(アルニコマグネット)
上掲の仕様から二か月後。PU-2にもアルニコマグネット仕様が戻ってきました。
おそらくこれが、当初意図した PU-2の持つサウンドなのだと、私は思っています。
①カバーを外された状態で入手。ボビンの外観は U-1000と区別がつきません。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1979年10月20日(土)と確認できます。
これもベースプレートが、3ポイント・マウントに対応しています。
③重厚なポッティングが施されていますが、ムラが大きいのはカバーを外す際の熱の加え
方(はんだごて)によるものと思われます。
④ボビンと保護テープにもたっぷりとワックスが浸透しています。おそらくカバーの内部
いっぱいにワックスが注入されていたのでしょう。
<1979年製 #291110> PU-2
上掲の仕様から20日後ですが、ベースプレートが標準的な2ポイント・マウントに復されています。またアルニコマグネット仕様を表すと思われる Aスタンプが押されています。
本体のラインナップでは「スーパーリアル・シリーズ」が開始された時期にあたります。
①カバーを外された状態で入手。これはダブルホワイツです。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1979年11月20日(土)と確認できます。
PU-2は、土曜が生産日だったのでしょうか?
③このアングルからだとマグネットの位置をはじめ、PU-2の形状がよくわかります。
④上掲の#291020よりワックス量が少なく、サポーターに浸み込んだことでの変色が無け
れば分からないくらいです。サポーターの形状も U-1000とは異なります。
<1980年製 #200910> PU-2
①カバーを外された状態で入手。ポールピースから、元の仕様はゴールドカバーですね。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1980年9月10日(木)と確認できます。
③ボビンに巻かれたテープの剥がれ止めのつもりか、木綿糸が数ターン巻かれています。
※もちろん行ったのは元オーナーで、ファクトリー仕様ではありません。
④上掲の#291110とは反対側にあたりますが、どちら側から見ても整然とした作りです。
<1981年製 #210926> PU-2
①元からのオープン仕様でしかもセット。PU-2としては最末期の生産時期にあたります。
②デイトスタンプによる製造年月日は、1981年9月26日(土)と確認できます。
③ポッティングのワックスは薄く均一に浸透し、丁寧な作業が伝わってきます。
④上方から見ても保護テープにワックスが染み過ぎておらず、外観を損なっていません。
☆トピック ~ PU-2 苦心の活用法~
「Grecoのハムバッカーたち」のトップページでも述べましたが、PU-2も例外なく位相が Fender製と揃えてあったことで、他社製ピックアップとの混用は、“わけが分かって” いないとセンターポジションでフェイズアウトする憂き目を見ます。もちろん4コンダクター仕様を入手できれば問題は一挙解決ですが、当時は入手方法が今日ほど潤沢ではありませんでした。私が80年代に行っていた活用方法は、出力が若干高いのを活用し U-1000をフロント(ネック側)、PU-2をリア(ブリッジ側)にマウントすることで、PUのパワーバランスをとることでした。これは実際に同形の U-1000×2 よりは遥かにセッティングがし易く、またサウンド的にも、それぞれのピックアップの特性が活かせたものではなかったかと、当時は悦に入ったものでした。今日では、ブランドによっては同じ型番のピックアップでもマウントポジション別の製品が用意されている場合もありますので、よく言えば、その先駆けのようなことをしていたわけですね。思いっきり手前味噌ですが(笑)。
PU-0C & PU-1
~ 検体未入手につき準備中。m(_ _)m ~