Vol.3 ストレートケーブル 80's以降編

ケーブルに起因する音質にこだわっている方も多いので、こういう文章を書くと叱られてしまいそうですが、私の所感では 3m程度だと音の違いはそれほど感じられません。

しかしさすがに 5mを超えると、良し悪しというか個性が表れてくるのが実感できます。

私は 3.5m以上のケーブルは余り使わないため、使い易さで選ぶ比重の方が高いです。

 

よく言われることですが、プラグやジャックに起因する音質劣化をケーブルの特性のせいにすることだけは、止めてもらいたいと思います。機材を拝見すると汚れたまま使っている方が意外に多いことに驚かされますし、中には接点復活剤を吹き付けただけで拭き取りもせず、そのまま挿している事例もありました。手入にも開眼してもらいたいものです。

最初のご紹介:CANARE GS-6

Vol.2 でも触れましたが、カナレ電気から登場した GS-6 を手にしたことで、カールコードを使う以外の用途には、他のケーブルを使うことは無くなってしまいました。

 

写真は最初期の製品で F-15 プラグのキャップには、未だブランド名がシールで貼られている懐かしい仕様です。

今でこそ市場には星の数ほどの競合製品が満ちていますが、80年代の前半には GS-6 ほどの完成度を持つケーブルは、舶来品の Belden 以外ありませんでした。と書くと語弊があるようにも思えますが、普通の楽器屋さんで入手可能なケーブルとして、GS-6 のクオリティとコスト&パフォーマンスは、とにかく群を抜いていたのです。

GS-6 の市販仕様には、F-15(カナレ電気のオリジナルプラグ)が標準装備されていたのですが、私は用途によってプラグを選ぶ習慣があったこと、3m や 5m という定尺の寸法が性に合わなかったため、最初の数本を除いて、後に購入した GS-6 は、全て計り売りのケーブルと用途に合ったプラグを組み合わせる、カスタマイズを行っています。

<私が GS-6 を愛用し続ける理由>

・音が素直。特性がフラットで癖が無い。ギターとの相性を気にせず使える。

・抜群の柔軟性と耐久性。丁寧に扱うことで、巻き癖は殆どつかない。

・抜群のコスト&パフォーマンス。この仕様でこの価格はあり得ないほどのクオリティ。

・ケーブルのみの計り売りがあり、好みの長さやプラグと合わせたケーブルが作れる。
※ ちなみに、私のギターからペダルボードまでの標準ケーブル長は 3.5mです。

2番目のご紹介:HITACHI LC-OFC

のっけから GS-6 をべた褒めしてしまいましたが、GS-6 以外のケーブルに関心が無かったわけではありません。

人から紹介されたり勧められたケーブルはずいぶん試しました。これはあの 日立製のケーブルということで私にとっては意外な製品でしたが、使ってみるとその帯域の広さに驚かされました。おそらく楽器用に開発されたものではなく、オーディオ用に開発された仕様だと思います。
音質的にはたいへん満足できるケーブルなのですが、残念ながら“硬い”(苦笑)。

リハーサルやライブでブンブン使う?には向いておらず、録音用途専用となりました。

 

名作と呼ばれたこのケーブル、残念ながら数年前ディスコン(廃品種)になっています。

でも拾う神ありで、某ケーブル専門店の尽力によって現行製品に復活したそうですね。

奇跡と呼ぶにはマニアックな製品ですが、これは素晴らしい出来事です。

3番目のご紹介:Aria ProⅡ ASGシリーズ

使い易いケーブルのダークホースとしてご紹介します。

抜群の柔軟性!とにかく柔らかい。ぐにゃぐにゃです。

場所を選ばず、どこにでも馴染んでしまうこの凄さ。

こたつに入ってギターを弾くとき、卓上のミニアンプなんかと繋いでみると分かります(笑)。

ASGシリーズは、80年代後半から90年代ほぼ全期間にわたってカタログに掲載されていたロングセラーケーブルで、比較的安価な設定ではありましたが、前述の柔軟性以外に下記のような優れた特徴を備えていました。ラインナップ上のライバルは、Greco の Mini HEXA あたりですね。

・真鍮から削り出した、一体型プラグを採用。

・線材は OFC(無酸素銅)を採用。

・ S-S プラグの仕様と、S-L プラグの仕様あり。

・長さのバリエーションに加え、豊富なカラーバリエーション。

 

欠点は、プラグのキャップが小形なことで、ストラトのジャックに挿してしまうと容易に抜けないこと。変な巻き癖をつけてしまうと、なかなか戻らないことくらいかな?

写真のケーブル、使い込まれて汚くてごめんなさい。でもプラグはピカピカでしょ!

これを読んだ友人から「ぐにゃぐにゃ軟らかい」理由は何だ? という質問がありました。

ひとつは、ケーブルのシース(外皮)が軟らかい材質であること。もうひとつはシールド側のアミ線の目が粗いことですね。それじゃぁシールド効果が犠牲になっているの? という対処には、芯線とシールド側アミ線との間に導電ビニルをしっかりコーティングするという、ノイズレス・ケーブル定番の工法で乗り切っているわけですね。

まぁアマチュア用というか一般的な練習用途には、これで十分ではないでしょうか?

4番目のご紹介:Live Line “Pure Craft” Studioシリーズ

Canare GS-6 と並ぶお気に入りで、Stratcaster には半々くらいの比率で使っています。どちらかというと、エフェクターが少ないときの出番が多いかな?

 

GS-6 より 1mm くらい太いのですが、意外に柔軟性があって動きにも馴染んでくるので使い易いケーブルです。

最初から Switch Craft #280 が装備されているうえに、キャップには粋なアンティーク調仕上げが施してあるのも、お洒落で気に入っています。

 

かれこれ 10年以上使っていますが、断線等の不具合はありません。布で乾拭きしているうちにシースの印刷が全て消えてしまったので、ノーブランドケーブルみたいです(笑)。

5番目のご紹介:MOGAMI #2524 with NB Prug

説明不要。海外ミュージシャンに愛用者も多く、世界的に高評価を博す国産ケーブルの代表格 MOGAMI #2524。

このケーブルもお気に入りのひとつです。

 

特にエレアコに使うと感じる、高域まで一気に駆け抜けるようなクリアな音色は、モガミ電線社のある信州の山なみと澄み切った空を思わせると例えたら大袈裟でしょうか?

構造的にもシールド側が緻密な網線の CANARE GS-6 に対し、整然としたスパイラル巻線で柔軟性と高耐久を打ち出すところに、メーカーの思想の違いが見えて興味深いです。

 

試作でノーブランドプラグを付けて以来、特に支障なく使い続けてしまいましたが、そろそろ Switch Craft #280 あたりに交換しようかと考えているところです。

ということで、後日に交換しました。

3m が2本あるのですが、2本とも S-S にしてあります。

キャップの付根に色ちがいで付いているのはトモカさんで購入した樹脂製ブーツ※)で、熱収縮チューブよりも傷みが少ないため、最近のお気に入りです。

※正確には Amphenol(アンフェノール)社製プラグ用の

 補修部品で、#280 等に使用する際はプラグ内部の絶縁

 チューブを合わせてカットする等の加工が必要です。

6番目のご紹介:Belden #8412 with G&H Prug

定番ハイエンドケーブルとして有名な Belden #8412。

私はおもに Canare L-2T2S と共に、エフェクトボード~アンプ間の接続に使用しています。

ラインケーブルの用途として適しているからかな?

 

優秀なケーブルなので、私はどちらかというとオーディオのパッチケーブルに、この #8412 を愛用しています。